春昼の街の裂け目に影法師
月朧お前思ひて垂らす蜜
ベタベタと春の服着て顔がなし
春闇の底に張られたEの弦
その男泥にまみれて花となり
春の闇我がシナプスが開花せり
春光や視界が命孕みけり
吹き飛ばす夢の残滓に風光る
クランケが目玉動かす春の闇
カナリヤを呑んでやろうと蛇穴を出づ
春寒し赤い鱗と濁り水
音立てて梅がお空に散らばれり
脈動が停止するまでピクニック
春空を望み柵越えグッドバイ
カラス舞う空に胸張る梅真白
山繭の中にしばしの雨が降る
さより釣り父が教えた異形のさかな
寝坊助の頬ひっぱたいては冴返る
これが僕の地図。
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