文字がとても速く流れて僕は目がクラクラしていた。
局地的に流線形になるとラジオ予報でDJマイロが言っていたので覚悟はしていた。
僕は信号待ちをしていた。
そこで流線形が発生した。
世界は形を失い、スピードによって言語化されていった。
それは景色だけではなく、僕の記憶にまで及んだ。
あらゆる事象が形を捨てて文字へ変換されて、僕の両脇を横殴りに流れていく。
彼女は眠れないと言ってクリニックの待合室で座っていたその目には窓から横断歩道が見えていてそこには僕が居たその隣のお婆さんが脳溢血で倒れた瞬間に主治医は彼女にスイミンヤクを処方したそれがハルシオンでハルシオンとはハルシネーションから来ているのだろうかそのお婆さんはQQ車で運ばれていったがQQ車はすぐに事故にあうこうも物事が進んでいるのに「オマエは何を突っ立っているんだ!!!!」
僕は、はっと、或いは、ビクっと震えて自分が道路のど真ん中に立っているのに気づいた。
流線形は通り過ぎたようだった。
僕に向かって彼女が駆け寄ってくる。
あの文字の中の彼女に違いない。
仮に違っていたとしても僕は構わない。
彼女が近づくと僕は体がふわりと浮上する気分がした。
車の行きかう道路の真ん中まで彼女は一直線だったからだ。