本当言葉

2010111012

今現在、僕は本当の言葉を探して歩き回っている。
体がとても小さくなって、
元の自分の手で言うと小指くらいのサイズになった時、
本当の言葉を探さなきゃ元には戻れないと思った。
もちろん、小さくなったことについて驚きもしたけれど、なんとなくそんな気がしてたから、別にどうってことはなかった。

問題は本当の言葉の方だった。
別にそんな大変な時に探すことはないだろうという人もいたけれど、そうじゃない。
僕は話さなきゃならない。本当の言葉を手に入れて口から発さなければならない。
そうじゃなきゃ世界のどこかで誰かが泣くような気がする。
それをもし僕が、防ぐことができたのなら、僕は元に戻れる気がする。
なんの保障もないけれど。
だから、とにかく僕は歩き始めた。

草原とか、トイレの中とか、ドブとか。あらゆる場所にヒコヒコ歩いて行った。
虫達がモンスターみたいで、僕を殺して食べようとする。
小さい僕はビリビリ震えて逃げ回るしかない。

いつも逃げ回ってる人へ。
こんな恐怖に立ち向かうなんて馬鹿げてる。逃げてOK。さぁ生き残ろう。

幸運なことに、ちっぽけな僕はマイロというお婆さんのポケットに入れてもらうことが出来た。
「どこへ?」
「本当の言葉のあるところへ」
「それはどこ?」
「わからない・・・」
困り果てたマイロ婆さんは僕を公園の砂場へ降ろしてくれた。

なるほど。言葉は砂に似ているもの。特に本当じゃない言葉は砂に似てる。発した瞬間にジャリジャリ嫌な音がするからね。この砂場の中に、もしかしたらあるのかもしれない。
そう思って僕は、一粒一粒たんねんに見ていった。掴んで、観察して、見極めて、遠くへ投げ捨てる。
何百回とそうしてたら、夜になってた。
それでもやめるわけにはいかない。だって僕は少しずつ、まだまだ小さくなってるんだ。

あ、そうそう、本当の言葉っていうのはね、
すぐれた詩人や賢い絵本作家なんかはわかると思うけれど、
気の利いた言い回しや洒落た単語なんかじゃないんだよ。
たぶん、「心からありがとう」とか「本当にごめんね」とかそういう形をしている。
同じ形なら砂場にもいっぱいあった。けれど、本当の言葉はもっと違うんだ。
瞬時に伝えたい相手に向かって光のように飛んで行って相手の頭に入り込んで温かい気持ちで満たす。
そうなったら、どうだろう?
発した方も、受け取った方も、きっと素晴らしくいい気持ちになれるだろう?
だからみんなが本当の言葉を探してる。

昨日は海の底をヒコヒコ歩いてた。
今は山の中をヒコヒコ歩いてる。
大きいものから逃げ回って、小さいものを踏み潰しながら、ヒコヒコ歩いてる。
世界で誰かが泣いてるんだ。
見つかったらここに知らせに来ます。
では!

#####

【送料無料】谷川俊太郎質問箱

【送料無料】谷川俊太郎質問箱

価格:1,499円(税込、送料別)

本当言葉」への2件のフィードバック

  1. ガングリコ

    いつも、ありがとうございます。
    あなたに出会えて本当に良かった。

  2. mojolovich

    こちらこそ!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です