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2007年04月11日

モグラを飼うおっさん

おっさんはモグラの話に余念がなかった。
「モグラを飼うことができれば儲けられる」
とよく口にしていた。

アルバイト先で知り合ってからちょくちょくおっさんの研究所に足を運ぶようになった。
おっさんは僕に何も強制しなかったし、僕はそこで座っておっさんの話を聞き、モグラを見ていた。

研究所と言ったって、借りた屋根つきガレージを改装して人が住めるようにしただけの場所だった。本当におっさんがどこに住んでいるのか僕は知らなかった。
また、モグラの研究で金がないのかおっさんは日雇いのアルバイトによく行っていた。
アルバイト先でのおっさんは若者に混じって黙々と肉体労働をこなす。休憩時間には一人離れて飯を食い、タバコを根元まで丁寧に吸う。
日に焼けた顔が労務者の悲しみを映し出しているようで、それはそれで美しいと思った。

僕がおっさんに初めて声をかけたとき、おっさんは顔をくしゃくしゃにして僕のおしゃべりに応じてくれた。
おっさんはモグラの話以外はとても普通だった。モグラの話になるとムキになったが、それは子供がザリガニについての話をする際にムキなる程度だったので、僕の許容範囲内だった。

おっさんの研究所には針金で編んだ筒が全体に張り巡らされていて、その中をモグラがヌゴヌゴと移動していた。筒は途中で大きなプランターに刺さっていて、その中にはミミズが沢山いるらしく、モグラの餌場になっていた。
モグラは体中で何かを感じていなければ死んでしまうんだそうだ。
だから、針金の筒はちょうどモグラの太さで出来ている。モグラがその中を進む際に体にちゃんと何かが触れていることを感じられるようになっていた。
「おっさんがモグラなしじゃ死んじゃうのと同じだねぇ」
その話を聞くたびにおっさんをはやし立てた。
「違う。モグラは本当に死ぬんだ。わしはモグラなしでも別に死にはしないが、モグラは本当に死ぬんだ」
おっさんはムキになってそう言うのだった。

また、おっさんの研究ゆえなのか、研究所の冷蔵庫(普通の家庭用)にはモグラの死体が三つ冷凍されていた。理由はわからないが、あるとき一匹の死体を見せてくれたし、あと二匹入っていると言っていたので三匹は入っている筈だ。おっさんは嘘は言わない人だった。

それから何ヶ月か過ぎて、ボクがおっさんの研究所に行くとおっさんはいなかった。
入り口は開いていたから中に入ってみることにした。
モグラの通路が酷くイビツになっている。
よく見ると、通路の素材である針金が出っぱっていてそこにモグラがひっかかっていた。
モグラの体表面には傷があり、そこから少し出血していた。ボクはモグラを助けようと針金通路をいじってみたが、巧妙に編んであって外れない。

諦めてボーっとしていると近所の人が覗きに来た。不審者だと思ったのだろう。
近所の人が言うにはおっさんは精神科の病院に入院したのだそうだ。何年かに一回の割合いで入院するらしい。

近所の人が出て行った後、僕は色々と考えた。
多分、おっさんはしばらく帰って来ない。モグラは?モグラはどうしたらいいんだろう?
僕が世話に来ることを随分と考えたが、出来そうになかった。僕は飼育装置からモグラを出して(三匹居た)、全部冷凍庫に入れた。
冷蔵庫からはガサゴソという音が聴こえている。僕は研究所を後にして、振り返らずに帰った。モグラもおっさんも一緒に凍ってしまえばいいと思った。

2007年02月01日

メモ帳の断片

古いメモ帳にこんなことが書かれていたのでUPします。

マイロ

マイロはがらくたのようにゆらゆら揺れている。
二人の男と二人の女。
男のうち一人はマイロ。
マイロは胡坐をかき、微笑している。
そうしながらいつもの悩みスパイラルの中へ入り込んでいる。

切り込むイメージ。

ナコという女のTシャツの胸の張りとそれによる皺がマイロの中でイメージを組み立てる。
白い透明な肌のナコにもう一人の男、砂男が絡み付いている。ナコは四つん這いになりこっちを見る。
マイロは世界中が異常気象になったような気分を味わう。

マイロのペニスは勃起し、萎え、また勃起する。
マイロは胡坐を崩さずに妄想と現実を行き来している。

2006年10月21日

キラキラ星

お約束の歌詞掲載。実は自分リメイク。

Title:キラキラ星

これっくらいの頭の中 これっくらいの頭の中
それっくらいのお前の中 それっくらいのお前の中
これっくらいのパンツの中 これっくらいのパンツの中
それっくらいのゴジラになる それっくらいの君の脳みそ

これっくらいのキリスト様 これっくらいのキリスト様
それっくらいの仏の中 それっくらいの仏の中
これっくらいの奇跡を見る これっくらいの奇跡を見る
それっくらいの目玉の中 それっくらいの目玉脳みそ

これっくらいのテロルの中 これっくらいのテロルの中
それっくらいの命トリガー それっくらいの命トリガー
これっくらいのあそこの中 これっくらいのあそこの中
それっくらいの光のパワー それっくらいの光脳みそ

これっくらいの暗闇から これっくらいの暗闇から
それっくらいの胎児が出た それっくらいの胎児が出た
これっくらいのメルセデスと これっくらいのメルセデスと
それっくらいのメルモで勃つ それっくらいのメルモ脳みそ

◎キラキラとウルトラ万年三日月クルクルパー◎
◎キラキラとウルトラ万年三日月クルクルパー◎
◎キラキラとウルトラ万年三日月クルクルパー◎
◎キラキラとウルトラ万年三日月クルクルパー◎

2006年10月11日

呪縛日

「ガラクタどもめ。生命の無いものまでがおれを苦しめるのか。」
嫌な夢で目が覚めた。今日も一日ついていないだろう。
外には放射能が溢れていて窓を開けることは許されない。でもそれはどんな時代でも同じだったろうと思う。

窓を開けるのには死を覚悟した勇気がいる。

おれはベッドの中で煙草に火をつけた。窓は極彩色に光っている。まるで狂ったテレビジョンだ。
原爆に憧れる彼のことを思い出す。彼は死んでしまった。わずか17歳で。
給食の時間にまで被爆者の写真を見ていたものだから、みんな彼を気味悪がった。
そんなに親しくもなかった。時々遊んだくらいの仲だった。でもおれは彼が嫌いじゃなかった。
噂では脳を地面にぶちまけて死んだのだそうだ。
おれはその時、涙も出ず、笑えもせず、ただ苦しみを咥えた。
苦しみから逃れようと思ったが、食いちぎることはぞっとする。
逃避のために謝罪をしようかとも思ったが、おれは罪など犯していない。
破綻しているがためにおれは苦しみをただ咥え続けた。

猫が外で交尾をしている。
放射能のせいで体長が2メートルにもなっているのだそうだ。
この間ニュースで見た。実物は見ていない。